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大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)3155号 判決 1967年7月31日

原告 吉田豊 外一名

被告 光徳電興株式会社 外一名

主文

一、被告らは各自、原告両名に対しそれぞれ二、五二八、七八二円宛及びこれに対する昭和四一年六月二四日から各支払済迄年五分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は被告らの負担とする。

四、この判決は第一項に限り、仮りに執行することができる。

五、被告らにおいて各自、原告らに対しそれぞれ二、〇〇〇、〇〇〇円宛の担保を供するときは、右各仮執行を免れることができる。

第一  本訴申立

被告らは各自、原告両名に対しそれぞれ三、二六五、〇九八円宛及びこれに対する昭和四一年六月二四日から各支払済迄年五分の割合による金員を支払え。

との判決並びに仮執行の宣言。

第二  争いのない事実

交通事故発生

時 昭和三八年一〇月一三日午前一〇時ごろ

場所 大東市竜間二七八番地先阪奈道路上(大阪方面から奈良方面に向けて上り坂で左曲り)

事故車(イ) 軽二輪自動車(一大う四七五六号)

右運転者 福井信行

事故車(ロ) 大型貨物自動車(大も二三七六号)

右運転者 上野七右ヱ門

死亡者 吉田裕至((イ)車に同乗)

態様 奈良方面へ進行中の事故車(イ)と大阪方面へ進行中の事故車(ロ)とが接触し、よつて裕至は死亡した。

第三  争点

(原告らの主張)

一、被告らの責任原因(自動車損害賠償保障法三条本文)

(1)  被告光徳電興株式会社(以下被告光徳電興という)は事故車(イ)を所有し、福井を雇傭して右事故車を運転させていた。

(2)  被告株式会社三和土木(以下被告三和土木という)は事故車(ロ)を所有し、上野を雇傭して、同被告の業務のため右事故車を運転させていた。

二、原告らの損害

(1)  亡裕至の財産的損害

亡裕至が本件事故により喪失した得べかりし利益は別紙<省略>(一)損害算定表記載のとおりであるが、その算定上特記すべき点は次のとおりである。

亡裕至は死亡時二〇才(昭和三九年九月一日死亡)であつたが、その平均余命の範囲内でなお四〇年は就労可能であつた。そして昭和三八年三月大阪市立生野工業高等学校を卒業し、死亡当時近畿日本鉄道株式会社に勤務して月収一四、七五〇円、年間賞与月収の四ケ月分の収入を得ていたが、同社においては、事故後三年間は別紙(一)算定表記載の如く昇給し、その後は毎年三、五〇〇円ずつ昇給し、満五六才の停年後は停年前の半額の所得を得べき筈であるが、右金額中右表の「本訴における請求金額」欄記載額相当額を得べきものとし、生存する場合の生活費をその六〇パーセントとして控除した右期間中の得べかりし利益からホフマン式計算により年五分の割合で中間利息を控除して右現価を算出すると、右表のとおり七、二一六、〇四一円となり、亡裕至は、右同額の損害を受けた。

(2)  亡裕至の精神的損害

亡裕至は本件事故により頭部打撲傷頭蓋骨折の重傷を負い、事故時である昭和三八年一〇月一三日から昭和三十九年九月一日迄長期間入院治療を受けたが、右期間中終始意識不明のまま、右受傷のため右九月一日死亡するに至つた。よつて亡裕至に生じた精神的損害に対する慰藉料は一、五〇〇、〇〇〇円を相当とする。

(3)  原告らの承継による取得

原告ら両名は亡裕至の父母として同人の被告らに対する逸失利益並びに慰藉料の請求権を相続により各二分の一ずつ承継した。そして原告らは各自本訴において亡裕至の前記逸失利益損害金の内一、九五六、二八六円ずつ及び慰藉料七五〇、〇〇〇円ずつを請求する。

(4)  原告らの固有の損害

(イ)  原告らの財産的損害

原告らは亡裕至の葬儀費として各自六八、八一二円ずつ支出し、右同額の損害を受けた。

(ロ)  原告らの精神的損害

原告らは、その間の唯一の男子である亡裕至に将来の希望を託していたのに亡裕至は前記の如く長期間意識不明のまま原告光子の付添看護甲斐もなく死亡するに至り、原告らは深甚な精神的打撃を受けたので、右精神的損害に対する慰藉料は原告ら各自一、〇〇〇、〇〇〇円を相当とする。

なお原告らは、本訴請求以外にも、亡裕至の入院治療費、葬祭及び各法事等について相当の出費をしているが、これらはその明細が繁雑となるので請求しないが、これらの出費も慰藉料額算定につき参酌すべきである。

三、損害の填補

原告らは各自、自動車損害賠償保障法に基く保険金(以下自賠保険金という)五〇〇、〇〇〇円宛の支払を受けた。

四、本訴請求

原告らはそれぞれ被告各自に対し、承継分中右(3) の二、六九六、二八六円及び固有の損害金二(4) (イ)(ロ)一、〇六八、八一二円合計三、七六五、〇九八円宛から三の保険金五〇〇、〇〇〇円を控除した三、二六五、〇九八円宛並びにこれに対する被告両名に対し本件訴状が送達された翌日である昭和四一年六月二四日から右各支払済迄民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告光徳電興の主張)

一、責任原因に対する主張

被告光徳電興は(イ)車の運行供用者ではない。

被告光徳電興が(イ)車を所有し、福井を雇傭していたことは認めるが、(イ)車を含め同被告所有の三台の軽二輪自動車はいずれも工務課員の専用車であつて工務課長の許可を得なければ使用できないことになつており、福井は設計事務に従事せしめ自動車等車輛の取扱をさせていなかつた。そして、本件事故当日は日曜日で福井は被告光徳電興の業務には就いておらず、右使用許可を得ることなく亡裕至と奈良方面ヘドライブするため同被告会社から(イ)車を持ち出し運転していたものである。

よつて被告光徳電興は本件事故当時抽象的にも(イ)車の運行を支配しその利益を享受する地位になかつた。

二、運行者免責の抗弁

(1)  (イ)車運転手福井は上り坂であるため時速二〇キロスートル以下で且つ道路左側を運転走行していたが、(ロ)車運転手上野は下り坂で加速度が加わり(ロ)車を高速度で運転走行したため本件事故が生じたものである。即ち本件事故は福井が徐行運転していたにも拘らず、上野が重大な過失ある高速度運転をしたため生じたものである。

(2)  本件事故当時(イ)車には構造上の欠陥、機能の障害はなかつた。

三、過失相殺

福井は運転歴なく運転技術未熟であつたので、同人の運転する二輪自動車に同乗して自動車の往来の激しい本件道路をドライブするのは事故の発生する危険性が高かつたから、亡裕至としては同車に同乗するのを避けるべきであつたのに、同乗してドライブしたため本本件事故が発生したものである。福井と亡裕至は昭和三八年三月大阪市立生野工業高等学校を卒業したもので、同級生であつたから亡裕至は前記の如き福井運転の(イ)車に同乗するのは危険なことは充分承知していた筈である。従つて亡裕至にも本件事故発生について重大な過失があつた。

(被告三和土木の主張)

一、責任原因に対する主張

被告三和土本が上野を雇傭し、その業務のため(ロ)車を運行中であつたことは認めるが、右車輛は上野の所有である。

二、運転車免責の抗弁

上野は(ロ)車を時速約一七キロメートルで運転し、本件事故現場に差しかかつた際前方約二〇メートルの処に(イ)車が対向進行してくるのを発見したが、右現場は急角度の曲り角であるため、右以上早期に対向車を発見することは不可能であつた。

上野は進行を続けたところ、(イ)車が約一〇メートル前方に接近した時高速度で中央線を越えて直進してくる気配を感じ、直ちに、急制動の措置をとり停止したが、福井は運転技術未熟であるにも拘らず(イ)車を時速四〇キロメートルで運転し右現場曲り角の処で運転を誤り、中央線を越えて直進し、減速或いは急停止の措置をとらなかつたため既に停止していた(ロ)車に衝突した。

なお、上野が当時警笛を吹鳴していたとしても、本件事故の発生を防ぎ得なかつたことは明白である。

よつて、本件事故は福井の重大な過失により生じたもので上野には何ら故意・過失はなかつた。

第四 証拠<省略>

第五 争点に対する判断

第一、被告光徳電興の責任原因

一、運行供用者

被告光徳電興は(イ)車を所有し、福井を雇傭していたことは当事者間に争いがない。

そこで福井は無断運転していたか否かにいつて判断すると、証人福井の証言及び被告光徳電興代表者尋問の結果により成立の認められる乙一号証の一ないし六、二号証の一ないし六によれば、福井は、本件事故当時設計事務に従事していて車輛の取扱はしておらず、(イ)車は本件事故当時被告光徳電興の工務課従業員近藤が専用者として常用管理していたこと、福井は翌日(日曜日)亡裕至とドライブするため本件事故前日退社時に右近藤から(イ)車の一時使用の許諾を得ると共にそのエンジンキーを交付してもらつたこと、本件事故は福井らがドライブ中に発生したものであることが認められ、証人木村の証言及び被告光徳電興代表者尋問の結果中右認定に反する部分は前掲証拠に照らしたやすく措信できず、他に右認定を覆えすにたりる証拠はない。

右事実によれば、福井は(イ)車の専用運転者であると共に事実上の管理者であつた近藤から一時使用の許諾を得てこれを運転中事故を惹起したものであるところ、福井の運行は同人のため長期間に亘り排他的に行なわれたものでなく、単に一時的に(イ)車を借り受けドライブの翌日には返還が予定されていたものであるから、近藤は福井に使用を委ねていた間もなお同車に対する支配を喪失していなかつたと認めるのが相当であり、従つて被告光徳電興は右の間も(イ)車の所有者として、同被告の福井に対する直接の使用許可の有無や福井の同車運行目的に拘りなく依然として近藤を介して、(イ)車に対する支配を継続しその一般的な運行利益を享受する地位を失うことなく持続していたものと認められる。

二、運行者免責の抗弁に対する判断

被告光徳電興主張の、福井は道路左側を徐行運転していた(無過失であつた)との事実は、証人福井の証言以外にはこれを認めるに足りる証拠がなく、右証言は後記第二の二説示のとおり容易に措信し難い。

よつて被告光徳電興は(イ)車の構造上の欠陥等の有無を判断する迄もなく運行供用者としての賠償義務を免れない。

第二、被告三和土木の責任原因

一、運行供用者

被告三和土木が上野を雇傭し、上野は同被告の業務遂行のため(ロ)車を運行中であつたことは当事者間に争いがないので、被告三和土木は本件事故当時(ロ)車の運行供用者たる地位にあつたものといわなければならない。

二、運行者免責の抗弁に対する判断

(1)  本件事故現場の状況

成立に争いのない丙一号証の二、三、四によれば、本件現場は幅員一〇・三メートルで通称ヘアピンカーブといわれる半径一五メートルの急カーブであり、勾配は一〇〇分の二、路面はアスフアルト全面舗装、カーブ北側は山、東側及び南側は谷、西側(カーブ内側)は芝生であるが、小高くなつていて、自動車の最高速度は四〇キロメートル毎時と指定されており、中心線があることが認められ、右認定を覆えすにたりる証拠はない。

(2)  (イ)車の走行状況及び衝突地点

証人上野、同佐々木の各証言及び丙一号証の四によれば、(イ)車と(ロ)車の衝突地点は前記曲り角のほぼ中央あたりで中央線から約〇・九メートル東側であること、(イ)車運転手福井は時速約四〇キロメートルで、右衝突地点の約一一メートル手前から中央線を越えて対向車線内を進行し、(ロ)車と衝突する前に何ら急制動の措置をとらず、いわゆるはすかい接触の状態で(イ)車のブレーキの右先端と(ロ)車の右側前部が接触擦過したことが認められ、この認定によれば、福井は(ロ)車との衝突を避けるべくハンドルを左に切つたが及ばなかつたものと推認され、証人上野及び同福井の証言中右認定に反する部分は、前掲証拠に照らしたやすく措信し難く、他に右認定を覆えすにたりる証拠はない。

(3)  (ロ)車の走行状況

そこで(ロ)車は予め徐行し急停止したとの被告三和土木の主張につき判断する。

証人上野の証言及び丙一号証の四によれば、(ロ)車運転手上野は、時速約二〇キロメートルで本件現場にさしかかり急カーブを右に廻りかけた際、自車右側方約二三メートル先に(イ)車が中央線寄りを対向進行してくるのを発見した後、約一二・五メートルに接近した時(イ)車がカーブを廻り切れず中央線を越えて衝突する危険があると感じ急制動の措置をとつたもので、上野にとり本件事故はあるいは避けられなかつたものと認められなくはないものの如くである。

しかし証人佐々木の証言によれば、(ロ)車は本件急カーブで時速約三〇キロメートルに減速した程度であるというのであるから、上野が時速約二〇キロメートルに減速して右急カーブを廻ろうとしたかどうかは甚だ疑わしいのみならず、一般に、軽二輪自動車は運転が不安定で蛇行し易く急カーブを高速度で廻ると車は遠心力によりその外側にそれやすいものであるから、(ロ)車運転手上野としては、前記のとおり、時速約四〇キロメートルという軽二輪自動車にしてはかなりの高速でしかも後部荷台に人を乗せて中央線寄りを対向してくる(イ)車を約二三メートル先に発見した時、同車が急カーブでハンドルの自由を失い中央線を越えてくる危険をいち速く察知し、直ちに急停止の措置をとるべきであつたのに拘らず、(イ)車を発見した後も同車の動静を注視せず安全にすれ違い得るものと軽信して直ちに急停止の措置をとることなく暫時進行したため、(イ)車との距離が接近し衝突の危険を感じて急停止の措置をとつた時は既に遅く、同車との接触が避けられなくなつたのではないかと疑われるのである。

そして他に、右の疑いを払拭し(ロ)車運転手上野に運転上の過失がなかつたと認めるにたりる証拠はないので、被告三和土木は(ロ)車の運行供用者として損害賠償責任を免れない。

第三、原告らの損害

一、亡裕至の損害

(1)  亡裕至の逸失利益

亡裕至が本件事故により喪失したと認むべき得べかりし利益は別紙(一)及び(二)の損害算定表記載のとおりであるが、その算定上特記すべき事項は次のとおりである。

成立に争いのない甲一および五号証並びに原告両名各本人尋問の結果によれば、亡裕至は大阪市立生野工業高等学校を卒業し近畿日本鉄道株式会社に勤務していたが、昭和三九年九月一日二〇才で死亡したこと、事故前は健康であつたことが認められるので、その平均余命(昭和三八年簡易生命表によれば一九才男子は五一・〇四年)の範囲内で少くとも満六一才に達する迄なお四一年間は就労し得た筈であると認められ、成立に争いのない甲一一号証の一、二によれば右訴外会社においては毎年別紙(二)算定表記載の如く昇給し満五六才に達した時に停年となることが認められ、又前記亡裕至の生前の経歴、健康状態からしても少くとも満六一才に達する迄は毎年停年前の半額にあたる収入を得ることができた筈であると推認することができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

原告らが亡裕至の逸失利益中本訴において請求する金額は、別紙(一)算定表中本訴における請求金額欄記載の如く、別紙(二)算定表の各金額の範囲内であるから、亡裕至の収入は別紙(一)算定表請求金額欄記載の額を下らないところ、本人生存の場合の生活費は原告らの自認する収入の六〇パーセントを越えるとは認められないので、右各収入額からこれを控除した右就労可能期間中の逸失利益額から年五分の割合による中間利息をホフマン式計算により控除してその現価を算定すると別紙(一)算定表中の「逸失利益の現価算定」欄記載の如く七、二一六、〇四一円となり、亡裕至は右同額の損害を受けたものと認められる。

(2)  亡裕至の慰藉料

原告両名本人尋問の結果及び成立に争いのない甲四及び五号証によれば原告ら主張の如き事実が認められるので、その他本件証拠に現われた諸般の事情をも参酌すれば、亡裕至の受けた精神的損害に対する慰藉料は一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

二、原告らの相続による承継

成立に争いのない甲一号証によれば、原告らは亡裕至の父母として同人の被告らに対する損害賠償請求権を相続により承継し、その割合は各二分の一宛であると認められ、右認定に反する証拠はない。

三、原告らの固有の損害

(1)  原告らの財産的損害

原告両名各本人尋問の結果及び同結果により成立の認められる甲九および一〇号証によれば、原告らは亡裕至の葬儀費用として各自六八、八一二円宛支出したことが認められ、右認定を覆えすにたりる証拠はない。

(2)  原告らの慰藉料

原告両名各本人尋問の結果によれば、原告ら主張の如き事実が認められるので、原告らの精神的損害に対する慰藉料は各自一五〇、〇〇〇円宛が相当と認められる。

四、過失相殺の抗弁に対する判断

本件事故発生の原因については亡裕至にも過失があるとの被告光徳電興の主張について判断する。

この点被告三和土木の訴訟代理人は明確には主張していないが、被告光徳電興は、被告三和土木とは原告らに対する共同不法行為者の関係に立つから、被告三和土木から、同被告が本件事故により原告らに対して負担すると認められた損害賠償額に基づき当然求償の主張を受ける関係にあるので、被告三和土木が過失相殺の主張をしない場合には、同被告のためこの主張する利益があるというべく、従つて、被告光徳電興は、過失相殺の主張については、被告三和土木を被参加人とする補助参加人の関係に立つものである。

従つて被告光徳電興の前記主張は、被告三和土木のためにも判断すべきである。

証人福井の証言及び原告両名各本人尋問の結果によれば、福井は本件事故三日前に運転免許を取得したばかりで運転技術も未熟であること、本件道路は大阪と奈良を結ぶ道路であるがいわゆる「ヘアピン」カーブが多くまた産業道路として自動車の往来も激しかつたこと、亡裕至はこのような事実を知悉していたことが認められる。そして一般には、前記の如く二輪自動車は運転が不安定であるのに、その運転手が運転技術未熟の場合にこれに同乗すれば一層その運転を不安定とし、まして自動車の往来の激しい道路をドライブすれば事故発生の危険性が高いから、このような場合には同乗を避けて事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるというべきであるから、亡裕至において、運転不安定でしかも運転者の運転技術未熟な(イ)車に同乗して右道路上をドライブした結果本件事故の発生を見た以上、前示注意義務の懈怠が事故の一因といわれてもやむを得ないものと考えられる。

よつて、亡裕至の右過失の程度を勘案すれば、亡裕至及び原告らの損害についてその三〇パーセントを過失相殺すべく、被告らが原告らに対して賠償すべき損害額は、前記一(1) につき五、〇五一、二二八円、一(2) につき七〇〇、〇〇〇円、三(1) につき四八、一六八円宛、三(2) につき一〇五、〇〇〇円をもつて相当と認められる。

第四結論

以上により、被告らは各自、原告両名に対しそれぞれ、原告らが亡裕至から相続した前記第三の一(1) 及び(2) (但し同四で過失相殺した額)の合計額五、七五一、二二八円の二分の一宛と同三(1) 及び(2) (但し同四で過失相殺した額)の合計額一五三、一六八円宛から原告らが受領した自賠金五〇〇、〇〇〇円宛を控除した残額合計二、五二八、七八二円宛及びこれに対する被告両名に対して本件訴状の送達された日の翌日である昭和四一年六月二四日から右各支払ずみ迄民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うべく、原告らの本訴請求は右の限度で正当として認容し、その余を各棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書、九三条、仮執行及び同免脱の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 亀井左取 谷水央 大喜多啓光)

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